道中は私達にもわかるような簡単な英語で。
ゆっくりとしたペースでウィーンの街を紹介してくれた。
そして話が一区切りすると、必ずこう聞いてきた。
何か質問は?
不思議なもので、こう来られると何故か質問が思い浮かばない。
聞きたいことや知りたいことはいっぱいあるのだけど、何を聞いていいのかがわからない。
言葉が思いつかないと言うのもあるけど、意思表示一つまともに出来なかった。
返答が無いのを確認して「OK...ないみたいだから」と次に話を進めてくれていた。
話は進み、車は進み、ドナウを越えてウィーンへ。
そこでも観光の話やオススメのプランなど色んな話をしてくれた。
しばらくすると、彼はこう聞いてきた。
日本人は何で英語が話せないんだ?
話を聞くと彼の奥さんは宮崎出身の日本人らしい。
だからもしかすると、彼自身ある程度は日本語で話が出来るのかもしれない。
それを踏まえての疑問だと思う。
日本人は英語教育をしっかりやっている。
なのに何故話せないんだ?
彼の話を「多分こういう話だよ」と日本語で話をしていたのも聞いていてわかってたかもしれない。
だからこそ何故そこまでわかってるのに会話が出来ないのか?と思ったのだろう。
残念ながらそのときは答えられなかった。
英語で伝えるための言葉が思い浮かばない。
それも間違いなくあるのだけど、何よりも伝えることに対して弱いのだと思う。
私がそう思ったのはそれから数日した後のことだった。
足を運んだのが今回の旅で私が一番興味を持っていた場所、自然史博物館。
足を運んで来た人にイメージをどう共有するか?というスタンスの表現。
大雑把に言うと日本の展示の多くは「AはAである、故にAとなる」という感じになる。
これだと意思や知識は言葉で伝えるだけで、相手の頭の中に絵を作り上げていない。
だから見た人は言葉として知識を覚えることが出来るが、それが一体何なのかというのを理解できない。
要するに知識は「覚える」ためのものであり「理解」するものではない。
ウィーンで見たのは自然史博物館だけでなく他の美術館にしても同じ。
そこにある意思や知識をどうやって相手(私達Visitor)に伝えるかと言うことだった。
イメージを伝えるのが仕事であり、展示の役割であるわけで、ちゃんと伝わらなければ意味が無い。
だから文字による説明だけでなく色んな手段を使っていた。
私は残念ながら英語が堪能じゃないし、ドイツ語なんてもっての外だ。
しかし展示を見ているだけで何が何を表しているのか、どういった種類なのか。
またどの順番で変化したのかが、完全じゃないにしろ伝わってくる。
それを感じたとき、死にたくなるほどのショックを受けた。
今まで勉強していたのはなんだったのか...
そんな大きな衝撃と共にこの国では「伝える」ということを凄く重要視してると気がついた。
相手の中にイメージを作ること、自分の中のイメージを伝えること。
それが会話であり、情報の交換であり、それが出来て初めて理解に達するんだ。
なるほど、これが最初に出会った問題の答えか。
そう思ったら景色がが少しだけ違って見えた。
そんな大きな衝撃と共にこの国では「伝える」ということを凄く重要視してると気がついた。
相手の中にイメージを作ること、自分の中のイメージを伝えること。
それが会話であり、情報の交換であり、それが出来て初めて理解に達するんだ。
なるほど、これが最初に出会った問題の答えか。
そう思ったら景色がが少しだけ違って見えた。
日本人の英語が苦手な理由は多分「話す機会の少なさ」にあると思う。
それは常に単一言語の、会話が成立する関係性が存在するから成り立つ話でもある。
いつもの言葉だけである程度成り立ってしまうから、あえて持ち出す必要がないのだ。
でも彼らはそれでは成り立たない。
だからしっかりと伝えるための手段を意識している。
英語はその中の、最たる表現道具の一つなのかもしれない。
それを感じてからは街中でも前を向き、できるだけコミュニケーションを取るようにした。
私はこう動く、私はこう考えている、求めている。
少しずつだけど、周りに伝わっているのがわかった。
帰国直前に自然と泣いてしまったのはそういう意識の変化からだったのかもしれない。
本当に名残惜しく、同時に妙な達成感があって溢れ出す感情を堪えることが出来なかった。
ホテルマンは「泣かなくていい、また待っている」と笑って声をかけてくれた。
帰りの車の運転手は笑顔でティッシュを出してくれた。
ありがとうしか言えなかったけど、それが伝えられて凄くうれしかった。
そして今回の旅で刻まれた「伝える」と言うこと、その意味。
これからの人生の中でもっともっと育てていかなくてはならない、種が芽吹いたと思う。
たった7日間の旅だったけど、私が手に入れたものはきっと大きい。
さて...私には何が出来るだろうか。
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